精神科薬剤師が解説!うつ病の薬に関する効果や注意点(副作用)

「うつ病の薬は本当に効くの?」
「飲んでも大丈夫?」
「飲んだら止められないって聞くけど本当?」
うつ病の薬に関する情報は溢れていますが、人々に正しく伝わっていないケースは多いです。

本記事では、精神科病院に薬剤師として勤務する筆者が、うつ病の薬について以下のとおり解説します。

  • うつ病の薬の効果・副作用
  • 薬に関するよくある質問

この記事を読めば、薬について正しい情報がわかり納得して飲めるでしょう。
ぜひ、最後まで目を通してみてください。

目次

うつ病とは?

一時的な気持ちの落ち込みではなく、常に心が重く深く沈んでしまい、日常生活に大きな影響を及ぼす状態です。
代表的な症状は以下のとおりです。

  • 食欲がない
  • 朝起きるのがしんどい
  • なかなか寝付けない
  • 笑顔がない
  • 活動量が減る

うつ病はストレスと遺伝が原因で起こると言われており、脳内のノルアドレナリンやセロトニンの量を低下させてしまうのです。

ノルアドレナリンは覚醒、意欲、集中力などに関与します。
セロトニンは安心感、リラックス、食欲などに関与します。

うつ病の薬の種類

うつ病の薬は大きく分けて5種類がありメカニズムが異なります。一つひとつ特徴を解説していきます。

【うつ病の薬の一覧表】

代表的な薬の商品名(成分名)を種類別にまとめました(2024年4月時点)

商品名(成分名)種類
・パキシル(パロキセチン)・ジェイゾロフト(セルトラリン)・レクサプロ(エスシタロプラム)・ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)SSRI
・サインバルタ(デュロキセチン)・トレドミン(ミルナシプラン)・イフェクサーSNRI
・トフラニール(イミプラミン)・アナフラニール・トリプタノール(アミトリプチリン)・ノリトレン(ノリトリプチリン)三環系抗うつ薬
・テトラミド・ルジオミール(マプロチリン)四環系抗うつ薬
・レメロン/リフレックス(ミルタザピン)NaSSA
  • SSRI

うつ病の治療で最も一般的で、脳内のセロトニンを増やして症状を改善します。
比較的副作用が少なく安全性が高いとされていますが、性欲がなくなったり胃腸に問題が起こったりするリスクはあります。

  • SNRI

セロトニンとノルアドレナリンの両方を増やします。
SSRIよりも幅広い症状に対応できますが、口が乾きやすくなったり心拍数が上がったりする可能性があります。

  • 三環系抗うつ薬

最も歴史が古い薬です。効果が強いため、便秘や眠気などの副作用も強めにでる傾向があります。
一般的にはSSRIやSNRIを使っても効果が不十分な場合に使うケースが多いです。

  • 四環系抗うつ薬

三環系よりも副作用を軽くする目的で作られた薬です。効果も比較的マイルドです。

  • NaSSA

新しいタイプの薬で効果も強めです。ノルアドレナリンとセロトニンの量を増やしますが、特にセロトニンに働きます。体重が増えたり眠気が出たりする場合があります。

どの薬を使うかは一人ひとりのライフスタイルに合わせて、医師が適切に選択します。

うつ病の薬の注意点(副作用)

副作用が出る場合、程度は人によって様々ですがしっかり医師や薬剤師から言われた通り薬を飲めば、そこまで恐れる必要はありません。念のため以下の6つの症状を挙げておきます。

  • 胃腸症状

薬の飲み始めは胃のむかつきや吐き気などが現れる場合があります。
しばらく飲んでいると体が慣れて症状が和らぐケースが多いです。

  • 体重増加

NaSSAは特に体重増加を引き起こすと言われています。
特に女性は体重変化を気にする人も多いため、食生活に気をつけて適度な運動を心がけましょう。

  • 動悸やイライラ感

薬を飲み始めると、セロトニンやノルアドレナリンの量が体の中で増えて、動悸やイライラ感が出てくるケースがあります。

  • 激しい不安感や焦り

薬を飲み始めて数時間以内に起こるケースです。
セロトニンが増え過ぎてしまうのが原因で、高熱が出たり汗をかいたりする場合があります。

  • 眠気

日中の眠気を引き起こす可能性があります。
日常生活や仕事に悪影響を与える場合は薬の変更が推奨されます。

  • 性欲低下

SSRIでは特徴的です。非常にデリケートな問題ですが副作用として困っている人も多いため、恥ずかしがらずに医師や薬剤師に相談しましょう。

様々な副作用が出てきて怖くなってしまった人もいるかもしれませんが、不安に思いすぎる必要はありません。薬の販売前には安全性を確認するための臨床試験がしっかり行われているからです。

ぜひ、医師や薬剤師の説明をしっかり聞いて薬を飲み「こんな副作用が起こることもあるんだ。念のために頭に置いておこう」というスタンスでいるようにしましょう。

うつ病の薬に関するQ&A

筆者が受けた代表的な質問を紹介していきます。一つひとつ解説していきます。

薬の効果はどれくらいで出る?

効果を実感するまで2〜4週間はかかります。

薬の飲み始めは体に合わず胃のむかつきや食欲不振などが出る可能性はありますが、次第に治まってくるケースが多いので焦らず様子をみましょう。

市販で売ってる薬はある?

本記事で取り上げた薬は市販では売っていません。病院を受診しないと受け取れない薬です。

市販で漢方や植物由来の薬もありますが、うつ病治療において医師からもらう薬と同じ効果の期待はできません。
しっかり治すには、病院を受診するのが大切です。

薬は本当に意味ある?

薬を適切に飲めば症状は改善されると、数多くの論文で報告されています。


「うつ病なんて気のせいだ。薬なんかでよくなるわけない」と思わずに、医師や薬剤師から説明された通りにしっかり飲みましょう。

薬を飲むのはやめられる?やめ時はいつ?

症状が良くなれば、医師指示のもと薬を飲むのを止めることも可能でしょう。

しかし、薬をいきなり中止すると離脱症状や再発リスクが高まるため、自己判断でやめてはいけません。
徐々に薬の量を減らしていき、医師が止めるタイミングを見定めていくケースが多いです。

病気ではない人が飲んだらどうなる?

健康な人が薬を飲んだら、副作用だけが現れてしまいます。

より一層気分が上がって気持ち良くなるのかと勘違いする人もいますが、決してそのようなことはありません。
体にとって悪影響でしかないため、絶対にやめましょう。

妊婦さんは飲める?

飲める薬と避けた方がいい薬があります。

記事に書いた薬は比較的安全なものが多いですが、SSRIのパキシル(パロキセチン)や三環系抗うつ薬は赤ちゃんの臓器形成に影響を及ぼす可能性があるため、避けたほうが無難です。

うつ病の薬を正しく理解して飲もう

「うつ病の薬はよくわからないし、怖いから飲みたくない」と思う人も少しは不安が解消されたのではないでしょうか。

本記事では以下の内容を説明してきました。

  • うつ病の薬の効果・副作用
  • 薬に関するよくある質問

うつ病になる前の予防は大切ですが、病気になってしまったら薬について正しく理解し、しっかり飲んで治すようにしましょう。

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この記事を書いた人

薬剤師。大学卒業後、調剤薬局→派遣勤務(治験コーディネーターや製薬メーカーでの薬相談窓口対応)→精神科病院勤務。医療ライターとしても活動中。うつ病などの精神疾患を予防・再発予防するための発信をSNSで「薬を飲まないためのメンタルヘルス」として行っている。

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